驚きの効果を得るために

VEntilation(通風)とLUX(昼光利用)を最も効率よく行える開口部が天窓(トップライト)です。効果を最大限に生かし、快適な空間を計画するための天窓プランニングをご紹介します。
Daylight - 昼光利用

天窓による採光では、明るさが均一で安定した天空光を利用できます。

" the best way to light a home is nature's way. " 
Frank Lloyd Wright 
①建物の奥を照らす効果 

採光や眺望を確保するために窓は必要ですが、壁面の窓だけでは実験モデルのように照度が行き届くのは周辺エリアに限定されます。(a)(b)とも、床を見ると昼光が照らしているのは人形の後方付近までです。
建物のより奥に昼光を採りこめる天窓(トップライト)によって(c)、明るさを均一にし、家事や読書など、室内作業の効率と快適性を確保することができます。高所からの採光は空間に広がりやゆとりを感じさせる効果も。
天窓(トップライト)と窓を組み合わせるとキッチンの写真(上)のようにバランスよく自然光の分布をコントロールできます。(b)+(c) 

*雲り空を想定した実験室内にて撮影。開口面積比 (a):(b):(c)= 3:1:1 
*画像(c)の処理上、天窓(トップライト)の一部が切れています。 

②採光効果のシミュレーション 

室内の奥の部分や作業面の採光状況を確認するためには、昼光率を目安とします。昼光率とは屋外の天空照度と室内で作業をするテーブル面などの照度を比較した比率です。 

昼光率=作業面/全天空照度

「どれくらいの昼光率が必要なのか?」 
室内で自然光を実感するには、平均値として5%以上が目安です。2%以下になると、室内が薄暗く感じられ、昼間でも照明が必要になります。VELUX Daylight Visualizer を利用すれば、天窓(トップライト)ほか開口部からの採光と昼光率が簡単にチェックできます。 



③意匠的な効果 

天窓(トップライト)から入る天空光(拡散光)、その視覚的効果は曇りの日でも絶大です。柔らかく包み込むような光は、建築物やインテリアの色と形を美しく浮かびあがらせてくれます。 

また、プライバシーを優先するために窓に制約を受ける場合でも、天窓(トップライト)を高所に設置することで、近隣の視線を気にすることなく採光と開放感が得られます。 

- 開放的なリビングルーム - 

リビング・寝室など居室で使用される天窓(トップライト)の面積は、床に対して10%程度が目安となります。家族が集まるLDKには明るいスポットが必要で、天井を高くとって容積感を得ることや、屋外への眺望を工夫することで開放感が得られます。


④自然光が運ぶ健康 

子供の成長や教育に強い関心を持つ多くの母親のために、子どもの健康的な発育・発達に及ぼす「自然光」の効果についてのデータがあります。 

「自然光のあふれる教室で勉強する子供は、読解力が26%高まり、計算が20%速くなる」という調査結果がPacific Gas and Electric Company(カリフォルニア州)による 「日光と人の能力との関連性調査」 で紹介されました。 

教育に与える効果は住環境においても同様のことが言えます。天窓(トップライト)を利用すると、自然光あふれる空間づくりができるだけでなく、小屋裏を利用した、遊び心や想像力を刺激するような空間づくりもできます。

また、人体への影響も報告されています。現代人の多くは、1日の約90%を屋内で過ごしており、自然光の不足を放置すると、うつ病やパニック障害につながる社会不安障害(SAD)を引き起こす可能性が強いといわれています。骨にカルシウムを運ぶ重用な役割を果たすビタミンDも、私たちが適度に太陽光をあびることによって体内で合成されるのです。 

これらは一例ですが、自然光が子供や家族の健康に良い影響を与えることからも、ふんだんに自然光を採り入れる天窓(トップライト)の利用が有効です。

採光の計画

採光分布では、居室の奥や廊下などに 「採光が十分に届くかどうか」 その明るさを検討します。

昼光率は5%程度、プラン上の目安としては、天窓(トップライト)の総面積が照らしたい床面積の10%程度になるようにします。

直射光を意識した設置としては、建物の南北中心線より少し南側に置くことで、建物の中央部をより効果的に照らせます。また、天空光を利用して曇天でも明るい室内を意識した設置では、できるだけ照らしたいエリアの真上になるように検討します。
VENTILATION -  自然風利用

風圧を得にくい路地や道路の風でなく、屋根上を吹く風を利用できます。

①天窓(トップライト)は通風の効率が4倍

住宅の窓は、一般的に南面に多く設けられるので、典型的に北面の天窓が効果的ですが、南北の窓だけを開けた場合と、南面の窓と階段上の天窓を同時に開けた場合を比較すると、後者のほうが4倍の通気量を得られると言われています。より広い意味では、風の入口か出口いずれかに天窓(トップライト)を利用すれば、効果的に通風を利用できるといえます。

②煙突効果(ドラフト効果)と排熱

建物の上下階の温度差によって発生する上昇気流により温まった空気を流しだす働きが、煙突効果です。高低差のある開口部からは、無風でも煙突効果によって空気の流れが起こり、下から上へと空気が抜けていきます。この働きにより、天井付近に溜まった熱気を排出する「排熱」ができ、夏の暑さも効果的に軽減できます。

図:天窓を開けた直後と、天窓を開けて30分後の温度分布(STREAM V8によるシミュレーション、初期室温38℃、外気温26℃、無風)

③日よけの効果的な使用

日よけは眩しさを抑えるだけでなく、夏場の暑さ対策にとっても効果的です。日射熱を70%以上カットする遮熱ガラスが透過する熱を抑え、日よけは残りの日射が室内に直接当たることを防ぐので、他の窓と比べて 「天窓(トップライト)が暑い」 ということがなくなります。また、通風を妨げないベルックスのブラインドは日よけをしながらの通風・排熱が可能です。巻き上げておけば空を見渡せ、日差しを採り込むことができます。

④温暖化防止への貢献

建物や道路の照り返し、エアコン室外機の熱、通風の欠乏などでおこる街のヒートアイランド化。これに対し、クールアイランドという言葉を耳にします。緑あふれる街では、木々が日陰を作り照り返しを抑え、夜間に空気の温度を下げるため、涼風を得ることができます。この結果、1日を通して通風で過ごせる時間が増え、エアコンを使う時間を減らすことができます。

自然の恵みを最大限に利用する天窓(トップライト)は、大きな効果を発揮します。涼風を効果的に屋内へ導きいれるとともに、木々により遮られがちな光を上部からの自然光で補うのです。日中に照明を使用する時間が減少するだけでなく、冬季には室内の暖かさを逃がすことなくより明るい日差しを採り入れ、夏季には通風を効率よくおこなうことで冷房の使用頻度を減らすことができます。

⑤自然換気の検証

ベルックス名古屋営業所は、東西に面した急勾配の切妻屋根に多くの天窓(トップライト)がつけられています。天窓(トップライト)による通風を利用して、エアコンの使用を控える実験をおこないました。
効果的な通風により、室温は湿度の高い日で2~3℃、湿度の低い日で5~6℃、建物周辺の外気温より低くなることが分かりました。

一般的に、室温26℃~27℃、湿度40%~60%が夏場の快適な室内環境と言われています。実験では建物周辺が40℃近い日も多くありましたが、通風によって体感温度が下がることで事務員は1か月に及ぶ実験期間中、室温30℃までエアコンを使用せずに過ごすことができました。

通風の計画

夏場の排熱を効果的におこなえるだけでなく、四季を通じて新鮮な空気を取り込める開閉式の天窓の設置をおすすめします。

天窓のサイズを検討する場合は、通風を検討する居室床面積の3%程度(1/35)の天窓換気面積を目安とします。

夏場の風向も考慮し、天窓が正圧、負圧になるときに、入口あるいは出口となる窓が同じ空間内にある計画を意識しましょう。
ENERGY - 「省エネ」

設備に頼る部分を減らすことでゼロエネルギーに近づくことができます。

太陽光発電などによる 「創エネ」 と、生活の中でエネルギー消費を減らす 「省エネ」 を組み合わせて計画することで、よりサステナブルな暮らしを実現することができます。

設備による 「省エネ」 だけでなく、自然風や昼光を利用して、自然を感じることのできるサステナブル住宅がこれからの次世代を担う住宅です。屋根を効果的に使って快適で環境にやさしい住まいを実現しましょう。

①熱損失軽減と明るさの確保

同じ開口率でより明るい天窓(トップライト)を計画することで、暖房消費を削減することが可能になります。四季を通じて建物の奥を照らす天窓。天気の悪い冬の1日にも明るい住空間を提供します。

②体感温度

一般に在室時に体感する温度は、表面温度(周囲の窓・壁・床などの平均放射温度)と室温の平均と考えられます。[体感温度 ≒(表面温度 + 室温)÷ 2] 室温が同じでも表面温度が低いと寒く感じ、高いと暖かく感じるということです。ガラスの室内側温度を外気温が-7℃の時に同条件で計算すると、単板ガラス-1℃、複層ガラス(ペアガラス)10℃、ベルックス遮熱・断熱複層ガラス16℃となります。

※ガラス中央部の熱貫流率による計算値です。(外気温-7℃、室温24℃)
※VSタイプの熱貫流率値を使用。
※室外風速、換気状態、空気の流れなどによりガラス温度は異なります。

③結露に有効な天窓換気

天窓(トップライト)の換気効率の高さは、冬の悩みの一つ「結露」に対しても有効です。加湿しすぎた時など、空気中の水蒸気量が多いと思わぬところで結露することもあります。湿った空気を入れ替えることが結露対策に最も効果的で、効率良く換気を行えば、室内の温度が冷えきってしまう前にすばやく換気を終えることができ、暖房の復帰も早くなります。

④日射の遮蔽

効果的な採光を得る上でも、通風を計画する上でも南面の天窓の有効性は見逃せません。南面天窓の暑さ対策には、遮熱ガラスとブラインドを組み合わせると効果的です。遮熱ガラスを使用した南面天窓は、各方位のサッシと比較してほぼ同等の日射侵入量※となります。

※ガラスからの日射侵入量
※サッシ:低放射複層ガラス
※天窓:遮熱断熱複層ガラス

⑤自動制御による排熱

天井に溜まった熱気は、屋根上を吹き抜ける風を利用して排出することができます。手軽に温度・湿度・CO2濃度で自動制御できるのがVELUX ACTIVE with NETATMOです。外部の気象情報をウェザーデータから反映することができ、自動的に換気・排熱を行うことが可能です。対向する天窓を設けると、排熱を行う上で効果的です。

※ハイサイド(垂直)使用には、別途鋼板掴みアダプターをご利用ください。

天窓で自動化

開口の配分

外気に接する建築部位の中で、やはり熱損失と日射取得が最も大きいのが開口部。省エネ基準に沿った計画をする上で、屋根・外壁の表面積に対する開口部面積の割合(開口部比率)を検討することが求められます。性能を満たす天窓(トップライト)を効果的に配置すれば快適性を備えた住宅を設計できます。

連窓天窓の検討

天窓の大きさや配置を考える時、連窓は大きなヒントとなります。通風より、採光に必要な天窓面積の方が大きいので、開閉型とフィックスを組み合わせることで効果的に開放感や明るさと通風を同時に確保できます。

また、南面使用時は窓間の梁がスリットとなり、開放感を確保しながらも直射光を減らしてくれます。下図のような縦長サイズの連窓では特に夏場朝夕の日射時間を減らせます。

天窓タイプの選択

天窓(トップライト)の操作部まで、手が届くか届かないかを基準にタイプを選択します。手が届く場合は、ルーフウインドウシリーズを、届かない場合は、スカイビューシリーズを、屋根勾配が無い場合はフラットシリーズをおすすめします。各タイプごとに使用可能な勾配を合わせてご確認ください。
 
高所での開閉操作は、リモコンによる電動開閉、またはロッド棒による手動開閉を選択できます。ロッド棒操作では、目安として床面から3.5m位までが限度となります。ブラインド操作についても忘れずに検討しましょう。

ブラインドの選択

ブラインドの設置により、天窓(トップライト)から入る光と熱をコントロールできます。プリーツやローラータイプのブラインドは直射光を抑え拡散光に変えてくれるので、明るさを大きく損なわず日射対策が行えます。ハニカムやシェスタタイプのブラインドは遮光性が高いので寝室などに最適です。
※フラットシリーズFCM、FS SRスチール補強天窓には、ブラインドの設定がありません。

■ 天井の仕上げ

 採光や気積(容積)、通風を想定して天井の形状を検討します。小さな天窓(トップライト)でも天井開口を大きくすると、より効果的に光を採りこめます。また、空気の循環を促すことで結露のリスクを軽減できます。 

夏の通風を計画する場合、気積を大きくすることで、快適な空気、温熱環境が得られます。天窓(トップライト)による効果的な排熱のためにも勾配天井をおすすめします。

■ 壁の色と反射光

天窓(トップライト)からの光を拡散、分配して室内の明るさを均一にするためには、壁面を明るい色で仕上げるのが効果的です。反射光の利用で壁など素材の持つ面の特徴を生かすことができます。

■ 屋根の断熱

壁や屋根の断熱性能が上がると、熱損失が減少します。夏涼しく、冬暖かい住宅を実現には欠かせないポイントです。 天窓(トップライト)開口部分の天井開口をラッパ状に開く際は、左図のように納めると断熱施工ができます。

勾配天井を採用する際には、省エネ基準に従って断熱材の厚みを十分に確保することをおすすめします。

■ 屋根面の検討

ベルックスは、あらゆる屋根材、勾配に対応できます。屋根面の設置位置については、水切りの標準施工のために原則として棟や山、谷からは600mm以上離してください。
(多雪区域では、落雪の影響を考慮して、山、谷から900mm以上離してください。)

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