建築基準法上、石蔵そのままの構造は認めらません。薄暗く佇む大谷石の石蔵に、明るく活気のあるアグリツーリズムの拠点をイメージして設計されました。
「石蔵の魅力である大谷石。採光は必要でも壁面に穴を開けたくありませんでした。古いものを活かしながら新しいものを入れるようにして建築はシンプルに仕上げました。取り入れた天窓の優れた効果により、その光は素顔の造形を陰影で際立たせてくれます。店舗として利用するには、排煙の開口部が必要となります。それもまた天窓で確保できたので、吉田村ビレッジでは、開口部として全ての役割を天窓が担っています。」
「昭和16年、吉田村農協の米蔵としてコミュニティの中心に作られた建物も、市町村の合併で農協移転により使われなくなりました。用途変更が難しく、多くの石蔵が取り壊されていきますが、この建物は、鉄骨造と天窓により再生しました。今後、同じように多くの建物を再生する際の前例となってくれればと思います。」
アトリエ慶野正司 慶野氏
~ アグリツーリズムとは ~
イタリアでは農村に星付きレストランがあり、観光客を集めるアグツーリズムが盛んです。現地で採れた野菜を使い、シェフが腕を振るいます。宿泊施設も充実しており、自然のなかで朝食やランチ、夕食を楽しみながらゆっくり田園風景のなかで過ごす旅を満喫できます。アグツーリズムとは、農業と観光の2つの単語を組み合わせた言葉で、トスカーナ州で1960年代に農村の過疎化を食い止めるため、田園の環境保護のため考案されました。農業に従事していることが条件だそうです。
<実例集>吉田村ビレッジ