ARCHITECTS' concept
密集地の狭小住宅
「ちいさな段差」で広がりを確保
下町の密集した住宅地に建つ、夫婦と子供2人のための住宅です。袋小路の最奥となる条件の厳しい立地で、道路沿いに建ち並ぶ周囲の住宅は、道路斜線によって、一定の壁面ラインと軒高を形成しています。そこで、道路と隣家の壁面ラインに対して斜めに建物を配置し、斜線制限に対して境界からの水平距離を確保しながら、3階までまっすぐな壁面でシンプルなヴォリュームとしました。
密集地の狭小住宅なので、光や風、広がりをどのように獲得するかが課題になります。各層の連続性を考えるとスキップフロアが一つの選択ですが、平面的な広がりが半減してしまうのが難点です。ここでは、各層の床の端の部分を少しだけずらす「ちいさな段差」と「景色を見切る窓」によって、隣家との新しい関係性を試みました。空へ抜ける景色を獲得しつつ、窓が周囲の家々の窓からちょうど半層ずれた高さになるようにしています。
隣家との視線の交錯を回避するための「ちいさな段差」は、上の階ではベンチや腰掛けになる高さです。視線が上へ上へと誘導されるよう意識して、3階のテラスや子ども部屋への空間の広がりを演出できればと考えました。スチールの階段は軽快なつながりを演出するアクセントとなり、天井のコーナーに設けた天窓は隅を消して閉塞感を感じさせない効果を生んでいると思います。