ARCHITECTS' concept

窓の方向を考えながら
回遊するプランをイメージしました

建坪70㎡程の旗竿地で隣地が近く、窓を設けることに近隣からの制約も大きい立地です。この設計に至ったのにはクライアントの仕切りのない大きな一体空間にしたいという要望がありました。屋根を支える柱のない構造とし、窓の方向を考えながら回遊するプランをイメージしました。リビングの床下に広い収納を設けて、ダイニングのカウンターとほぼ同じ高さにすることでスキップフロアのようになっています。

敷地は、奥に向かって登って行く丘の中腹で、吹き降ろしてくる風が期待できます。そこで、ダイニングの北西角に壁面開口を設けて、屋根の一番高い頂点に設けた大きな天窓へ風が抜けていくようにしました。この天窓が天井に溜まる熱気を抜いてくれます。光の使い方では陰の中にうつろう光を意識しています。比較的閉じた空間に天窓から注ぐ直射光により、光と陰の明暗がその時々の味わいのあるシーンを生んでくれます。

変形地や狭小地を含め、敷地にはその場所にしかない環境があります。光、風、緑など自然の力を生かしながらその場所とクライアントにもっともふさわしく素直で豊かな建築をつくっていきたいと考えています。その後何度かお邪魔していますが、思っていた以上に良かったのが、キッチンカウンターにコンクリートを使ったことです。油が浸みた跡がいい味を出しています。
OWNERS' impression

広い空間の熱気が上に抜けるので
毎日のように天窓を開けています

新築を検討するにあたって、予算に合わせるとあきらめなければならないことが大きく、色々探して辿り着いたのが石川さんでした。土地選びを含めて相談していましたが、子どもが小さいので、区切った個室はいらないということと、マンションのリビングでは座る場所がソファーしかなく、居場所がなかったので、座るところを多くするためにリビングを一段さげてどこでも座れるようにしたいということが主な要望でした。

見ていただけるように、実際には反対にリビングが一段高くなっていますが、模型を手に「玄関から家を覗いたとき、奥の見え方が綺麗ですよ。」と提案され、夫婦ともにこのプランが気に入りました。家を訪れる友達はみんな面白がってくれますし、家族の雰囲気をいつでも感じられるのでとても気に入っています。今は舞台のようなリビングで子供が踊りなど練習しているのをダイニングに座って見るのが好きです。

裏手が山(丘)になっていて、上の方から風が下りてくるので、ダイニングテーブル奥の窓を開けるといつでも涼しい風が入って来ます。真夏は冷房なしでは厳しいですが、天窓を開けると広い空間の熱気が上に抜けて行くので暑さが全然違います。天窓は電動で便利に開閉でき、防犯も気にならないので春以降は毎日のように開け、風を感じて気持ち良く過ごしています。


所在地: 兵庫県西宮市
延床面積: 100㎡
使用天窓: VS電動タイプ S06サイズx1台
施工: 木村工務店
photo: 畑拓